政府は3日、新しい「エネルギー基本計画」を閣議決定した。
約4年ぶりの改正で、今回の計画は「第5次エネルギー基本計画」だ。
エネルギー基本計画は、国の中長期的なエネルギー政策の指針だ。
「エネルギー政策基本法」に基づいて作成され、エネルギーの「安定供給の確保」「環境への適合」「市場原理の活用」に主眼がおかれている。
具体的には、電力に関することが中心だ。
第5次エネルギー基本計画では、2030年の発電割合を以下のようにすることを目標として決めた。
火力発電56%、再生可能エネルギー22~24%、原子力発電20~22%
火力発電とは石炭や石油、天然などの化石燃料から得られる熱エネルギーで、発電機を運転し電力を得る方式だ。
世界中で主力の発電方式である。
近年、コンバインサイクル発電という技術の実用化により、発電効率が飛躍的に高まった。簡単に言うと、発電機から排出された熱を再度利用し、もう一度発電機を動かすというものだ。
1950年代の火力発電の約2倍〜3倍の熱効率だ。
石炭発電所はこらから実用化が進みそうだ。
石油発電所はまだ時間がかかりそうだ。
問題は再生可能エネルギーだ。
第5次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーを「主力電源化」と明記した。
現時点の技術では、太陽光発電や風力発電は基幹電源にはなり得ない。
基幹電源の条件は、①安定供給が可能なこと、②経済的であること、③安全であること、④環境に悪影響がないこと、である。
太陽光発電なら太陽光が当たらない時、風力発電なら風が止んでいる時には発電をすることができない。
このため、火力発電のバックアップが常に必要であり、非常に非効率な発電方法だ。
更に、太陽光発電所や風力発電所を建設するためには、山間部などの森林を伐採する場合も多い。台風や大雨などによる発電設備の破損による被害、土砂災害などの報告もされている。環境に良い発電方法なのか非常に疑問だ。
第5次エネルギー基本計画には無理がある。
再生可能エネルギーの比率をここまで上げてしまったら、ドイツの二の舞になるだろう。
この半分程度の割合に押さえるべきだ。
足りない分は、コンバインサイクル発電による天然ガス発電所と石炭発電所を増設するのが、最も現実的な選択肢だ。
あと、原子力発電で2割の電気をつくるには、30基程度の原子力発電所の稼動が必要だ。
現在稼動中の原子力発電所は9基だ。
あと20基以上の稼動は、少しハードルが高いような気がする。
理想はメタンハイドレートや石油を作る藻などの自前資源の実用化だ。
しかし、調べてみると技術的にも商業的にも非常に難しい。
エネルギー基本計画には、世論が大きく反映されている。
国民は少しだけ現実主義になるべきだ。
マスコミの影響が強いから難しいだろうが。