九州大学の福井宣規(よしのり)主幹教授らの研究グループは、アトピー性皮膚炎の痒みを脳に伝えるためには「ニューロキニンB」という物質が必要であることを発見した。
アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある皮膚炎が、慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気である。
国民の7~15%が罹患しており、過半数は乳児期に、90%までが5歳までに発症する。
アトピー性皮膚炎の痒みは「IL-31」という物質により発生する場合が多いことはわかっていた。しかし、IL-31がどのようにして、脳に痒みの感覚を伝えているのかは不明だった。
アトピー性皮膚炎でお腹をかいている男の子のイラスト、出典:いらすとや
同研究グループは、「DOCK8」というタンパク質を欠損した患者が重篤なアトピー性皮膚炎を発症することに着目した。
まず、遺伝子操作によりDOCK8が発現できないマウスを作製した。
このマウスは掻破行動を伴う重篤なアトピー様皮膚炎を自然発症し、血中のIL-31が異常高値を示した。この時、脊髄後根神経節でニューロキニンBをコードする遺伝子発現が上昇していることを発見した。
次に、遺伝子操作によりニューロキニンBが発現できないマウスを作製した。
このマウスは通常のマウスに比べ、IL-31投与による引っ掻き行動が顕著に低下していた。他の痒み惹起物質に対する反応性には違いが認められなかった。
ニューロキニンBは「NK3R」という受容体を介して機能する。
NK3R阻害剤をマウスに投与したところ、IL-31による引っ掻き行動が顕著に抑制された。
これらの実験より以下の2点がわかった。
①IL-31が脳に「痒み」の感覚を伝えるにはニューロキニンBが必要
②NK3R阻害剤でIL-31による痒みを抑制できる
これは物凄い発見である。
アトピー性皮膚炎の新たな治療法に繋がる可能性が高い。