大阪府立大学の研究グループは、レーザーの照射で細菌を高密度濃縮し、高い生存率で捕獲できる「ハニカム型光濃縮基板」の開発に成功した。
ハニカムとは、ハチの巣のような正六角形または正六角柱を隙間なく並べた構造を指す。
ハニカム型光濃縮基板のイメージ図、原典:Science Advances
研究グループは細菌に対し、その数倍程度の大きさの細孔を密に配列した基板を準備できれば、設置面積を最大化でき、外場で遠隔的に多数の細菌を生きたまま基板上に濃縮・捕捉できると考えた。
サイズ数百nm~数μmの細菌に対し、1μm~10μm程度の大きさの細孔が必要と推測した。
この仮説を元に、高効率な光発熱基板を開発した。特徴は以下の2点。
- 水滴を鋳型としてポリマー膜中にハニカム状の細孔を自己組織的に形成
- 細孔表面に金属ナノ薄膜(膜厚50nm)を形成
ハニカム状の光熱フィルムに20秒間レーザー(出力80 mW以下)を照射すると、共に、80〜90%の高い生存率で捕獲することに成功した。
この際に発生した対流により、細菌に高密度集積(106〜107cells/cm2)が起こった。
高密度トラップした細菌の機能評価を行うために、電流発生菌の一種であるシュワネラ菌を対象とした実験も行った。
濃縮・集積でき、レーザー照射の回数を増やすと電流密度を1~2桁増大することが分かった。
電流密度の増大は、レーザー照射により高密度集積されたシュワネラ菌によるものと考えられる(断定ではない)。これは細菌が生きたまま(機能保持したまま)捕獲できていることを強く支持する結果である。
情報元:Light-induced assembly of living bacteria with honeycomb substrate | Science Advances
今回の光濃縮技術は、様々のものに応用できる可能性がある。
身近なところでは、食中毒菌などの悪性細菌を対象とした検査である。その他にも、有機物の分解による下水処理、バイオエタノールの生産、電気エネルギーの取得、微生物デバイス...
現時点で過度な期待はしない方がいいかもしれないが、夢が広がる技術ではある。