京都府立医科大学の樽野陽幸(たるの あきゆき)教授らの研究グループは、舌で「おいしい塩味」を感じる仕組みを明らかにした。
食塩をおいしく感じる仕組みは今まで謎だった。
マウスを用いた実験で、舌にある塩味を感じる細胞(塩味受容細胞)を同定。更に、同細胞で塩味の情報が変換され、脳へと伝えられる仕組みを分子レベルで解明した。
明らかとなった「おいしい塩味」受容の細胞および分子メカニズム、京都府立医科大学提供
研究グループは、塩味受容細胞は舌の味蕾(みらい)と呼ばれる味覚器官の中にあり、ENaCとCALHM1/3と呼ばれる分子を持つ細胞であることを突き止めた。
塩分をおいしく感じる仕組みは以下のとおり。
研究グループは、ENaCやCALHM1/3が欠損したマウスを作製し、その行動を調べた。
その結果、塩分を好む行動は特段見られず、味神経の塩分に対する応答もなかった。
ENaCとCALHM1/3の2分子を併せ持つ細胞が塩味細胞であることが分かったという。
これまでは、ENaCだけが「おいしい塩味」を感じるためのセンサーと考えられてきた。
しかし、ENaCが欠損したマウスでは、漬け物と同程度の高濃度塩分に対して、弱いながらも塩分を好む行動が観察された。ENaCに依存しない塩味の受容メカニズムの存在が示唆された。
「おいしい塩味」を感じる仕組みは、かなり複雑になっているという。
塩分の過剰摂取は、さまざまな心血管疾患の引き金となる高血圧のリスク因子である。そして、高血圧の人は意外と多い。
厚生労働省の「平成29年国民健康・栄養調査」によると、収縮期血圧が140mmHg 以上の人の割合は男性37.0%、女性で27.8%である。同調査には1歳以上の子供も含まれている。
情報元:平成29年「国民健康・栄養調査」の結果 | 厚生労働省
同研究成果が減塩食品の開発、延いては、高血圧患者の減少に繋がることを期待する。