国際農研とマダガスカル国立農村開発応用研究センターは、移植苗のリン浸漬処理により、イネの増収と冷害回避を実証した。リン欠乏圃場で有効。
従来の施肥法(表層施肥)と比べると、籾収量は9~35%増加した。
生育日数が短縮したため、生育後半の低温ストレス回避にもつながった。
マダガスカル人は日本人の2倍以上のコメを消費するが、イネの生産性は低い。農家が貧しいために肥料を十分に購入できないこと、栄養が乏しい土壌が多いことが、主な理由だ。
マダガスカルなどアフリカでは、作物の三大栄養素の一つである『リン』の土壌中存在量が不足している農地が多い。
同技術は、安定的なイネ生産に貢献できるものと期待される。
移植苗のリン浸漬処理、国際農研提供
今回の研究で行った「移植苗のリン浸漬処理」は、リン肥料(重過リン酸石灰)と水田土壌を混合した泥状の液体(スラリー)に、苗の根を30分程度浸してから移植する(上図)。
小規模農家にも実践しやすい局所施肥技術である。
研究グループは、マダガスカルの農家のほ場で、2年間にわたり同技術の効果を評価した。
移設苗にリン浸漬処理を施すだけで、無施肥に比べて59~171%、表層施肥に比べて、同量もしくは半分の施肥量で9~35%、籾収量が増加した。
リン固定能の高い熱帯の貧栄養土壌において、同技術の効果が高いことが証明された。
更に、リン浸漬処理は、無施肥に比べて約3週間、表層施肥に比べて約10日間、イネの生育期間を短縮できることも分かった。
その結果、同技術は、標高の高い地域における生育後半の低温ストレスを回避し、イネの登熟不良の改善にも有効であることが示された。
同成果は、マダガスカルの現地メディアで広く取り上げられ、農家や行政機関の関心が高まっている。
今後は、マダガスカルの数100の小規模農家を対象とした実証試験を予定。ここで得られたデータを基に、更に同技術を完成させる。
素晴らしい成果である。これこそ、本物の国際貢献である。
しかし...筆者の勘違いかもしれないが...
日本のマスコミはほとんど報道していない。