兵庫県立大学の橋本佳明准教授らの研究グループは、ワサビ成分(AITC:アリルイソチオシアネート)が、ヒアリの燻蒸剤(くんじょうざい)として有効であることを明らかにした。
燻蒸剤とは、常温かつ気体の状態で作用させて殺虫・殺菌をする薬剤。大半の燻蒸剤は人体に有害。
ヒアリの働きアリ、原典:USDA ARS(米国農務省農業研究局)
ヒアリとは、南米大陸原産のハチ目・アリ科・フタフシアリ亜科に属するアリの一種。
外来生物法により「特定外来生物」に指定。主に、アルカロイド系の毒と強力な針を持つ。
ヒトが刺されても、痛み・かゆみ等の軽症で済む場合が多い。体質によっては、アレルギー反応や蕁麻疹(じんましん)等により重症化する場合もある。ごく稀に死亡する。
ヒアリが国内で初めて発見されたのは、平成29年(2017年)5月で、支那の広東省広州市から神戸港へ貨物船で運ばれたコンテナの中から発見された。
以降、令和2年(2020年)4月末時点で、16都道府県において49事例が確認されている。
ヒアリの国内定着を未然に防ぐためには、ヒアリが侵入した貨物を内陸部で素早く燻蒸(くんじょう)処理しなければならない。
しかし、従来の燻蒸に使われてきた薬剤には、健康被害や環境汚染が懸念されるものもあり、特殊な機材や防護マスクなどが必要だった。
簡便な方法で、安全に、ヒアリを燻蒸できる方法の確立が求められていた。
研究グループは、ワサビ成分(AITC:アリルイソチオシアネート)に着目した。
同成分は強力な防虫効果があり、かつ、安全な成分であると知られてい。しかし、その高い揮発性と強い刺激性のため、コンテナ貨物などの燻蒸に使わることは今までなかった。
最近になり、マイクロカプセル化する技術が確立。ワサビ成分の揮発量と徐放性のコントロールが可能となった。
マイクロカプセル化わさびペレットとガスバリアー性プラスチック袋を使った燻蒸方法、兵庫県立大学提供
研究グループは、わさび成分を含有した50グラムのペレット(マイクロカプセル化わさびペレット)と、ガスバリアー性プラスチック袋を使った燻蒸方法で、ダンボール箱内のヒアリ殺虫効果を検証した(上の写真)。
実験の結果、24時間燻蒸すると、ダンボール箱内のヒアリを完全に殺虫できた。マイクロカプセル化わさびペレットの有効期限はおよそ2週間だった。
また、マイクロカプセル化わさびペレットを入れずにガスバリアー性プラスチック袋のみを使用した実験では、殺虫率は20%弱だった。
同研究により、ヒアリが侵入したコンテナ貨物が内陸部の倉庫に運ばれてしまった際、どこでも、安全に、貨物を燻蒸処理できる方法が示された。
研究グループによると、博物館の収蔵庫・食品倉庫などにおいて、防虫・防カビ管理としても活用が期待されるという。
こういう研究は地味ではあるが需要である。私たちの安全に直結するからだ。
ただ...
ヒアリの多くは支那からの貨物に紛れて日本に入ってくるが、この事を知る国民は少ない。
マスコミにはこういう事実を報道してもらいたい...と筆者は願う。