九州大学理学部4年生の金谷啓之さん(研究当時)らの研究グループは、脳のない動物「ヒドラ」が眠ることを発見した。
睡眠とは、定期的に繰り返す、意識を失う生理現象を指す言葉である。
哺乳類をはじめ、爬虫類や両生類、魚類、昆虫などの多くの生物種で確認されている。
これまで、睡眠は脳を持つ動物のみが行う生理現象と考えられてきた。
ヒドラとは、刺胞動物門のうちヒドロ虫綱花クラゲ目ヒドラ亜目に属する生物種全体を指す呼称である。
体長は約1センチ。体は細い棒状で、一方の端から6~8本の触手が生えている。
稀に、熱帯魚や金魚などの水槽に侵入することがある。
ヒドラには、非常に強力な再生能力がある。体をいくつかに切っても、それぞれが完全なヒドラとして再生する。
ヒドラに脳はない。体内時計をつかさどる「時計遺伝子」もない。
研究グループは、ヒドラは時計遺伝子を持たないにも関わらず、行動量が時間帯により変化していることに着目した。
ヒドラの行動を赤外線カメラで撮影し、その動きを自動的に検出する実験装置を開発した。
この装置には「マイクロアレイ」という技術が使用されており、数万種類の遺伝子の発現を解析することが可能となっている。
同装置でヒドラの睡眠現象を解析したところ、明確な睡眠位相が存在していた。つまり、ヒドラは眠ることがわかった。
脳のない動物で眠りが確認されたのは初。
研究グループは、ヒドラに様々な生理活性物質を投与してみた。
その結果、睡眠薬に使われるメラトニンや、覚醒させる物質のドーパミンで、睡眠が促進されることが判明した。
その結果、マウスやショウジョウバエ、線虫などのモデル動物で確認されている睡眠制御が、ヒドラにおいても関わっていることがわかった。
研究グループによると、「動物は脳を獲得するより前に、睡眠を獲得していた可能性がある」という。
これはスゴイ発見である。
教科書の内容が変わる。
日本学術会議の会員任命拒否に「学問の自由が侵害される」とか「憲法違反・違法行為だ」などと騒いでいる連中より...
こういう若い研究者を大切にすべきだ。